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 アスクル株式会社

お客さまのために進化する―― アスクルのDXを支える鍵とは

取材日:2023年

お客さまのために進化する――
アスクルのDXを支える鍵とは

❝オフィス通販からのトランスフォーメーション❞ 実現の鍵となるDXと共創

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DX のような大規模プロジェクトをいかに遂行するかは大きな関心事だが、さまざまな要因で計画が頓挫してしまいがちだ。
どうすれば DX を成功に導けるのか、大規模プロジェクトを遂行し変革を成し続けているアスクルに話を
聞いた。

  • 当ページの内容は、アイティメディア株式会社の許諾を得て、アイティメディア制作記事を転載しております。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが広まり、IT 部門においても大きな課題になっている。特にコロナ禍を経て、プロジェクトの進め方や働き方そのものを進化させることが求められる中、DX のような大規模プロジェクトをいかに遂行するかは大きな関心事だ。

また、「AI やビッグデータ分析、API 連携によるクラウドネイティブの活用など、最新技術をどう活用するか」「人材不足が深刻化する中でパートナーからスキルやノウハウをどう獲得して内製化を進めるか」なども大きなテーマだ。このように、企業の IT 部門が歩む道は決して平たんではなく、新たなチャレンジが求められる状況だ。

新しいチャレンジが PoC(概念実証)段階で止まってしまったり、一気に変革しようとしてプロジェクトが頓挫してしまったりするケースが増えている中、さまざまな大規模プロジェクトを着実に遂行し、変革を成し続けているのがアスクルだ。

大規模プロジェクトを着実に進めるための秘訣(ひけつ)や、パートナーの力をどう借りればよいかのポイントなどをアスクルの未来を担う若手リーダー 2 人に伺った。

パートナーと共に 価値を生み出していく共創こそが アスクルの最大の強み

アスクルは 2020 年 12 月に新たな「ASKUL WAY」を定め、時代の変化に適応して変革していくための礎に位置付けた。2022 年に発表されたアスクル初の統合報告書「ASKUL Report 2022」では、アスクルの強みとして「共創やビッグデータ」を挙げながら、変革し続けることを強調する。変革に対する考え方について、アスクルの児玉和寛氏(テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ デジタルエンタープライズ 1 部長)はこう話す。

「ASKUL WAY は、アスクルが創業時から掲げている『お客さまのために進化する』という企業理念を継承したものです。企業理念を時代や新しい価値に対して変化し続ける中でも変わらず引き継いでいくDNA であり、バリューの中核でもあります」(児玉氏)

アスクルでは、ASKUL WAY に基づいてB2B(企業と企業)、B2C(企業と個人)、ロジスティクスという大きく 3 つの事業を展開し、4000 億円以上の売上高がある。それを支える強みが「共創」だ。

「アスクルの商品やサービスは、アスクルだけでは提供できません。メーカー、サプライヤー、配送キャリア、エージェント、コールセンター、システム開発ベンダーといったさまざまなステークホルダーの協力の下で成り立っています。アスクルの成長の源泉である、お客さまの声や注文、商品レビュー、物流情報などのビッグデータを活用して、EC や物流のさらなる進化やニーズに応えるオリジナル商品の開発、パートナーとともに価値を生み出す共創こそがアスクルの最大の強みです」(児玉氏)

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アスクルの強み「共創」(提供:アスクル)

シンクロAG刷新や ASKUL EARTH ワンプラットフォーム化を推進

共創ビジネスを推進する上で中核となるのが、従来の EC サイトを統合する「Trylion」プロジェクトや「SYNCHRO AGENT」(以下、シンクロ AG)システムの刷新、データ基盤「ASKUL EARTH」のワンプラットフォーム化などだ。シンクロ AG をリードしたアスクルの山口裕二氏(テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ デジタルエンタープライズ2 フルフィルメント マネージャー)は、プロジェクトに対する考え方について、こう話す。

「シンクロAGは営業活動を担っているパートナーであるエージェント(代理店)を支援する縁の下の力持ち的な仕組みです。ただ、20年くらい前に作られたので、現在は DX を難しくする要因の一つでもありました。そこで日本情報通信さんにご協力いただきながら、AWS を活用したクラウドネイティブな最新システムにモダナイズしました。サービスとしての新しい価値の創出という点ではこれからなので、シンクロ AG の基盤に新たな肉付けをすることが次のミッションです」(山口氏)

新しい価値の創出で伴になるのが共創と、パートナーとのエコシステムだ。

「エコシステムにおけるエージェントの役割は、お客さまの開拓/稼働促進、注文管理、与信/回収管理が中心です。シンクロ AG もその機能を提供してきましたが、今後ビジネスを成長させる上では、お客さまの開拓/稼働促進などの営業活動に役立つ情報を提供することが重要です。システムとしても、ビッグデータを分析したり、共有したりするためのビッグデータプラットフォームであるASKUL EARTH と連携させながら、機能を強化することになります」(山口氏)

ASKUL EARTH のワンプラットフォーム化をリードした児玉氏は、基幹系システムとして採用しているSAPシステムの刷新も重要になると指摘する。

「SAP システム刷新の背景には、アスクルの屋台骨である B2B ビジネスのトレンド、お客さまや他社の動向が変わってきたこともあります。アスクルの強みであるサプライチェーンのシステム化や品ぞろえ、当日/翌日の配送や売り場作りは、今では B2B 全体として当たり前の品質になっています。購買プラットフォームや大企業連携の領域も大幅に伸長していてプロセス改善のサイクルが速くなっています。このため、中期計画と連動した DX を注力領域としています。ECシステムや商品システムの進化に合わせて、SAP システムが伴走することが重要です」(児玉氏)

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エコシステムとビッグデータ(原案:アスクル)

新たに高価値を生む システムへの進化や 基幹系システムと連携した データ活用に取り組む

SAP 刷新のポイントは、サービス改善の高速化、サイトの進化に伴走できること、ビジネススピードへの対応、ROI(費用対効果)の改善、システムの安定性/安全性だ。具体的には、最新バージョンへのアップグレードや、最新アーキテクチャで実装されたサステナブル基盤の実現、改修頻度の高い差別化機能を外出しし、「Fit to Standard」なシステムへの段階的な移行、内製化に向けたエンジニアの活用、投資コストの抑制などに取り組むという。

「アスクルのビジネスデータは膨大で、SAPには 10TB 以上のデータがあります。アドオン機能も多く、データベースを HANA にバージョンアップするだけでも大きな手間です。『ダウンタイム 12 時間』を目標にしたいと相談しても、『難しいです』と言われる状況です。今は(2023 年 6 月時点)、SAP システムをクラウドサービスにしたり、周辺システムを統廃合したりした上で、将来を見据えた設計図を描こうとしているところです」(児玉氏)

児玉氏と山口氏が手掛ける、将来を見据えた取り組みを共創パートナーの 1 社として支援するのが日本情報通信だ。シンクロ AG システムの刷新を担当した川戸中氏(エンタープライズ第二事業本部 第二プロジェクト部 第一グループ グループ長)はこう話す。

「SAP システムの周辺で統廃合が進んだり、新たに機能やサービスを創出したりするケースが増えてくると思います。シンクロ AG システムで支援させていただいたようなクラウドネイティブな技術のノウハウや知見も生きるので、引き続き共創をお手伝いします」(川戸氏)

ビッグデータ関連プロジェクトを支援してきた日本情報通信の坂元仁樹氏(データ&アナリティクス事業本部 クラウドインテグレーション部 第三グループ グループ長)はこう話す。

「SAP システムとデータ分析基盤は密に連携しています。SAP の改修に伴ってデータ分析基盤の改修も必要なので、引き続きご支援します。加えて、シンクロ AG の進化やいろいろな業務についても、ビッグデータの有効活用が必要です。『Google Cloud』の多様な機能を活用しながら、お客さま開拓や稼働促進のヒントと効果を提供できればと思っています」(坂元氏)

ChatGPTの活用など 新しいチャレンジで 一緒に課題を乗り越え 共に成長していく

将来 に 向 けた 新 しい 取 り組 みでは、「ChatGPT」に代表される生成系 AI の活用も視野に入っている。日本情報通信でも社内で専門チームがタスクフォースとして作られており、「ChatGPT ワークショップ」を開催するなど「生成系 AI にはどんなものがあり、どんな特徴があるのか」「業務でどう使えるか」といった検証や活用を進めている。日本情報通信でタスクフォースに参加している佐々木拓哉氏(エンタープライズ第二事業本部 第三営業部 第二グループ グループ長)は「例えばコードの自動生成などは内製化にも役立ちます。われわれの知見やノウハウを共有しながら、今後の使い方を一緒に検討していければと思っています」と話す。

アスクルでは現在、生成系 AI を使った自動化や効率化に向けた検討を重ねているところだ。
「限られたリソースを高価値の業務にあてがっていこうとすると、自動化を強力に推進する必要があります。既にチャットbotなどの技術は利用していますが、問い合わせ対応などで生成系 AI が利用できるかどうかを模索しているところです。日本情報通信さんと情報共有を進めながら、実現できるところから使っていければと思っています」(児玉氏)

大規模プロジェクトを遂行する上では、新しい技術の活用だけでなく、チームビルディングや開発体制の在り方も進化させる必要がある。具体的には、従来の階層型のチーム構成から、フラットな組織体の中でスピーディーな意思決定を可能にする仕組みを作り、コアな業務を中心に内製化を進めることだ。

「コロナ禍もあってリモート環境を活用したプロジェクト推進が一つのカギになったと考えています。数十人が 1 つのルームで議論できるので、フラットな環境でコミュニケーションを取れました。アスクルとしてもプロジェクトごとにリーダーが責任を持って取り組む体制を整備しました。サービスの進化が速いフロントエンドの領域では内製化を加速させ、1日に何度もリリースできるような仕組みを作り、社内にノウハウを蓄積できるようにしました」(山口氏)

「プロジェクトが大規模になる中では、自分の担当領域の仕事だけでなく、周辺システムとの関係性など、視野を広げて全体を俯瞰(ふかん)した上で仕事を進めるべきです。視座を高め、視野を広げることが必要だと思います」(児玉氏)

これを受けて、日本情報通信の境澤直聡氏(エンタープライズ第二事業本部 副本部長)はこう話す。

「アスクルさんへのご支援を通じて、日本情報通信にとっての課題、次のステップで必要になる取り組みが見えてきました。新しい取り組みにチャレンジする中で一緒に課題を乗り越え、共に成長していければと考えています」(境澤氏)

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左から日本情報通信の坂元氏、川戸氏、アスクルの山口氏、小林悟氏(テクノロジー本部 デジタルエンタープライズ統括部長)、児玉氏、日本情報通信の境澤氏

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アスクル株式会社

1993 年に事業所向け通販サービス「ASKUL」事業、2012 年には個人向け EC 「LOHACO」を開始。全国 10 拠点の自社 EC 物流センターから、全国に当日・翌日配送「明日来る」を実現しています。商品開発からラストワンマイルまで担うバリューチェーンにおいて、メーカーやパートナーとの共創を推進し、データとテクノロジーを最大活用してサイバー・フィジカル両面からのビジネストランスフォーメーションを進めています。当社のパーパス〈仕事場とくらしと地球の明日に「うれしい」を届け続ける。〉を実現する社会インフラであり続けることを目指しています。

本社:   東京都江東区豊洲 3-2-3 豊洲キュービックガーデン
創業:   1993 年 3 月
資本金:   21,189 百万円(2023 年 5 月 20 日現在)
従業員数: 3,574 名(連結 2023 年 5 月 20 日現在)
URL:   https://www.askul.co.jp/corp/

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日本情報通信株式会社
(略称:NI+C[エヌ・アイ・アンド・シー])

日本情報通信株式会社(NI+C)は、1985 年に日本電信電話株式会社(NTT)と日本アイ・ビー・エム株式会社(日本 IBM)の合弁会社として設立。システム開発から基盤構築、クラウド化への対応、社内外データ統合と AI による分析、EDI サービスやセキュリティ、ネットワークサービス、運用保守までをトータルに提供しています。「おもひを IT でカタチに」をスローガンに、様々な経験と最先端のテクノロジーでお客様の DX 推進を支援し、お客様の経営課題解決に貢献できる真のベストパートナーを目指しています。

本社:   東京都中央区明石町 8 番 1 号 聖路加タワー 15 階
設立:   1985 年 12 月 18 日
株主:   日本電信電話株式会社(65%)日本アイ・ビー・エム株式会社(35%)
資本金::  40 億円
従業員数: 1,286 名(2023 年 4 月 1 日現在 連結ベース)
URL:    https://www.niandc.co.jp/

●お問い合わせ

日本情報通信株式会社
【お問い合わせフォーム】https://www.niandc.co.jp/inquiry/
【メールアドレス】NIC_Contact@NIandC.co.jp

  • 記載の会社名、商品名、サービス名は各社の商標または登録商標です。
  • このページの内容は TechTarget ジャパン(https://techtarget.itmedia.co.jp/)に 2023 年 7 月に掲載されたコンテンツを再構成したものです。
    https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2307/28/news01.html

 

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