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アナリティクス導入事例

株式会社朝日新聞社

~ 一人ひとりのお客様に価値ある情報を届けるデータプラットフォームを整備 ~

取材日:2024年3月

全社で顧客情報を一元化、利活用のための【朝日CDP】 再構築

株式会社朝日新聞社(以下、朝日新聞社)は、これまで主に2系統あった顧客情報基盤を統合。新基盤上に全社の顧客情報を集約し、さらにマーケティングオートメーションの仕組みなどを加えてデータ活用を図る【朝日CDP】を稼働させた。日本情報通信株式会社(以下、NI+C)はこのプロジェクトを全面的に支援し、万全の進行管理を行い、予定どおりかつ予算内に本番稼働を迎えることに成功した。

顧客情報の“二元化”を脱却し、完全な一元管理へ

朝日新聞社は、紙媒体やデジタルメディアを介して広くニュースコンテンツを提供する総合メディア企業であり、スポーツや文化の催事などを主催・運営する事業でも広く知られている。消費者との距離が近く、ファーストパーティデータが集まりやすい事業環境ではあるが、長い歴史の中で顧客情報を活用することに積極的とは言えなかった。

近年、顧客情報の活用はあらゆる企業にとって経営改革の極めて重要な位置を占めるようになり、朝日新聞社でもその機運が高まってきた。収集した顧客データを適切に管理し、活用することで顧客ニーズを読み解き、より優れた顧客サービスの提供が期待できたためだ。そこで、2016年に「顧客統合システム」を稼働。このシステムは朝日新聞社が自社構築したもので、CDPを中心に顧客データを名寄せ管理しようとする構想がベースとなっていた。

メディア事業本部 CDPソリューション部 次長 岩本 和樹氏は、「以前は各部門がバラバラに顧客情報管理をしていたため、まずはそれらを一元管理しようという目的が第一に置かれました。情報活用部分はあとからついてくるという目論見もあり、データを集めてまずは理解しようとしたのです」と話す。

 

その後、顧客統合システムには、オンライン/オフラインのデータをすべて集めたが、顧客データを扱うシステムや基盤が他にも存在したため、システムデータと利活用の運用が二元化してしまった。

こうした状況になったため、部門≒システム横断型の顧客ニーズ分析を各部門が積極的に活用しようとする流れは生まれにくくなった。運用側のデータ投入にあたっても二重入力になり、クレンジングのやり方が投入先によって異なるために、そこにコストと労力をかける必要もあった。さらに、オプトアウト情報の反映漏れなど事故リスクの懸念も出てきた。

結果、顧客統合システムは一部で実施された部門横断型の分析やクロス集計を生かしたメール配信施策などで一定の成果を上げたものの、「利用者がやりたいことを、いままで以上の価値を伴って実現できる基盤」には育たなかった。他方、統合された顧客情報を活用して成果を生み出せるという価値に気づけたことは大きく、それが今回のプロジェクトへとつながっている。

データ活用を含む大きな枠組みを備えた基盤を構想

2022年、CDPをリニューアルするタイミングで、朝日新聞社は決断を下した。当時の二元化された運用をやめ、データ活用部分までを取り込んだ大きな仕組みとして、【朝日CDP】と名付けた新たなシステムを構想したのだ。データ活用機能を備えた顧客情報統合基盤として顧客統合システムを再構築し、顧客情報を完全に一元化した上で、社内のすべての部署が同じ情報に基づき、それぞれが必要な機能を使って業務を推進できるものとする。情報を蓄積してアップデートし続け、最新のすべての顧客情報を蓄積できるCDPに加え、マーケティングオートメーションの仕組みやDMPなど現場にとって利用しやすい機能群を組み合わせた大きな枠組みとして全体像を再定義したことになる。

この構想が実現すると、顧客情報を活用する業務は、すべて【朝日CDP】を使うことになる。データが1か所に集まるため、担当者が入力する手間は最小限になり、データの収集、管理、活用のプロセスは最適化する。さらに、限られたリソースをデータ活用により多く割く体制を構築することも期待できる。

プロジェクトの責任者に就任したメディア事業本部 CDPソリューション部 部長 崔 埰寿氏は、「複数社のコンペを実施し、パートナーにはNI+Cさんを選定しました。【朝日CDP】という構想が生まれた背景をきちんと理解してくれて、要望以上の提案をしてくれたことが印象的でした。実際にシステムを利用する人たちのニーズを先回りして想像し、それを設計思想に落とし込んだ提案でした」と話す。

コンペでは、AWSや各種ツールの導入・運用ノウハウといった技術力に加え、マーケティングやアナリティクスに関するノウハウでも高いスコアを獲得した。顧客データ基盤の構築実績が豊富で、個人情報を取り扱う際に必須のセキュリティ要件に知見があることも高く評価されている。

要件を精査し、抜け・漏れのない詳細設計を実施

システムは、AWSベースで構築。ETLツールのInformaticaをデータが流れる複数のポイントに使用してさまざまなデータソースからAWSに取り込み、AWSの機能も駆使してデータを整えていくプロセスを構築。最終的にはTreasure DataのCDPに一元化された顧客情報が蓄積される。その際に、AWS上のデータベースと社内管理のCDPを直接連携させる制約になっていたセキュリティ要件をクリアするために、データベース機能とファイル機能を適材適所に配置するなどの配慮も行った。CDPにある情報は、マーケティングツールやBIツールなどへ引き渡すことになるが、受け渡し先のシステムと相性が良く、かつコストメリットの大きいやり方で、エクスポートやSQL発行の自動/手動を使い分けた。

今回のプロジェクトで朝日新聞社側の実務を担当したメディア事業本部 CDPソリューション部 技師 岡崎 和也氏は、「2022年12月にスタートさせて実質的な開発期間は約半年というスケジュールでした。大掛かりなプロジェクトにしては短期間で、さらにコロナ禍ということもあって、打合せや実作業はほぼリモートです。当初は不安もありましたが、NI+Cさんの図解を用いた丁寧なヒアリングにより、RFPをより深く掘り下げた要件定義、基本設計を作成いただき、信頼できるパートナーだと感じることができました」と当時を振り返る。同じくメディア事業本部 CDPソリューション部 技師 山本 啓氏は、「私たちからうまく意見を引き出し、それをソリューションとして当てはめていってくれるイメージで、当初からプロジェクトはスムーズに進みました」と加える。

定例ミーティングは週に1度の頻度で行った。朝日新聞社側とNI+C側がそれぞれに進行を管理し、状況をすり合わせるやり方だ。役割分担を明確にし、システム側をNI+Cが統率したことで、朝日新聞社のプロジェクトメンバーは、要件検討と社内調整に集中することができた。ミーティングの際には、NI+Cが重要なポイントをドキュメント化し、進捗がとどこおらないようにきめ細かなサポートを実施している。

実は、責任者の崔氏は記者出身でIT関連の取材経験もない。「システムについては素人に近い私にも、NI+Cさんはわかりやすく説明してくれました。プロジェクトの課題についても包み隠さず共有してくれたことが、期限内かつ予算内の稼働の実現につながったと感謝しています」と話す。

“朝日新聞社とお付き合いしていた良かった”と思われるデータ活用を

本格運用がスタートし、いくつかの成果は見られた。セグメント別に送るメールは開封率が約30%向上。中には100万通単位で配信するメールもあるが、セグメント化のノウハウの向上もあり、開封率を含む顧客反応率は高率なまま推移している。さらに、顧客にとって不要と見られる案内を送らないようにしたため、オプトアウト率は0.1%以下を保っている。イベントで集まるオフラインデータの投入時にも、クレンジングが楽になり、それにかかる労力は最小化された。

岩本氏は、「建物に例えるなら基礎工事が完成した段階です。運用に集中できる環境は整いましたので、保守コスト削減で得たリソースをデータ活用人材の育成へと振り向け、さらに短縮できた業務時間はマーケティングや分析などの創造的な仕事に当てたいと考えています」と話す。

一方で、さまざまな課題も顕在化してきた。ユーザーは、実際に使ってみて初めて、自分たちの使いたいアウトプットの姿を想像できるようになるものだ。そのようなケースにも対応できるよう、データ活用部分は柔軟に設計している。現在は、各部門への浸透を図り、さまざまなニーズにこたえられるように活用部分のブラッシュアップを行っている段階だ。

崔氏は、「何を目的にデータを活用するのかと問われると、お客様に価値を還元するためだと答えます。反応率やオプトアウト率などの数字で語る以上に、“朝日新聞社とお付き合いして良かった”と思っていただける存在であるための施策をどんどんやっていきたいのです。そのためのデータ活用でありDXでしょう。【朝日CDP】は、朝日新聞社とグループ企業にとって、さまざまな顧客関連施策を実現するためのインフラになります。NI+Cさんには、私たちがここを土台に取り組むデジタル活用をさらに加速し、新たな価値提供と事業創出を含めた大きな構想の伴走役であり続けてもらいたいですね」とプロジェクトを総括してくれた。

< NI+Cより >

【朝日CDP】は、データを集めるところから、データを使うところまで、一気通貫のソリューションになっています。すでに膨大なデータが蓄積され、最新の情報が日々更新されています。朝日IDを持っている方だけでなく、紙の新聞を購読されている方、イベントに参加していただいた方など、オンライン/オフラインを問わず、すべての顧客データを名寄せしてきれいな状態に保っています。

今回のプロジェクトでデータの収集・管理・活用のプロセスが最適化され、全社のさまざまな部門で本格的なデータ利活用が進められる準備が整いました。プロジェクトメンバーは、データをだれもが利用できるようにする「データの民主化」を推進し、朝日新聞社様のDXをさらに加速させようとしています。

すでに私たちは、運用の伴走をするフェーズに入っています。現場から上がっていた具体的なデータ利用の案件に対して最適なソリューションを提案するなど、現在はデータをいかに使うかという話がほとんど。これからは“夢を広げていく”ことをサポートする仕事になりますね。その部分でもしっかり伴走していって、期待されている以上の成果をもたらせるよう努力していきます。

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