パイオニア株式会社(NI+Cクラウド)
「所有から利用へ」既存システムをNI+C Cloud環境に移行、統合し、アプリケーション資産を継続使用しながら、経費大幅削減を達成。
まずはコスト削減 一方で、安定したサービスの提供も確保したい
- 初期投資経費削減
- コスト削減の効果を即時に出す必要
- 老朽化に対する更新などのIT施策も実施しなければならない
- 安定したサービスの提供も必要
パイオニア株式会社(以下、パイオニア)は、「開拓者」という意味の英語を社名に含む。「最先端であることがパイオニアの伝統」と自らが言うこの会社の沿革を見ていくと、「世界初」という言葉が連綿と続く。エレクトロニクス分野で常に先端の技術を背景に、その名の通り、開拓者としての地位を保ってきた企業であることがはっきりとわかる。しかし、こうした高い技術力を持った企業でさえも、昨今の世界的経済状況の厳しい寒風からは逃れられない。
もちろん、コストを下げることは経営上で言えば日常的な命題だが、厳しい社会状況下で「コスト削減の効果を即時に出す」ということは至上命令ともいえるほどの重要な課題となった。しかし、その一方で老朽化するコンピューターシステムの継続的な更新も強く求められる。急激に動く市場に対して、古いシステムでは太刀打ちできないからだ。バラバラに配備され、バラバラに管理されてきたサーバーの統合で効率化と安定化は確かに図れる。事実、2008年の秋にはサーバー統合の提案が日本情報通信(以下、NI+C)からパイオニアに対してなされていた。しかし、折からの世界経済悪化を背景に、初期投資の負担が巨大すぎると言う理由で、その提案は凍結されてしまった。
「ITの世界でのコスト削減にはいくつかの方法があると思うが、基本的にはコンピューターという巨大な箱を買ったり使ったりということなので、まずはその部分を安くできないか、ということが主要の課題だった」と語るのは、パイオニア情報戦略部第一開発部長の石川雅巳氏である。投資経費の削減を先ず目指したいが、その一方で安定したサービスの提供も求められるという二律背反するような課題を前に、石川氏は以前からの付き合いのあるパートナーたちに助けを求めた。
その中でNI+Cから提案されたクラウドコンピューティング・サービスについて、石川氏は「多岐にわたる要望を丸ごと飲み込んでくれるようなものであり、まさにジャストフィットだった」と語る。09年の1月にパイオニアから打診を受けたNI+Cの営業担当者は「パイオニアにクラウドのパイオニア(開拓者)になってもらいたい」とクラウド立ち上げを目指して社内調整を開始。3月に提案合意、4月から調整に入り、7月からシステム移管とサービスの提供が始まるという迅速果敢な行動であった。システムの「所有から利用へ」という既存価値の大転換を意図もたやすく実行してしまう。ここにパイオニアの「開拓者魂」がはっきりと見える。
選定理由
- フレキシブルで自由なシステム
- ユーザー側の要望をしっかりと受け止めてくれる対応
明確に認識できるコスト削減効果が最大の選定の理由だが、「必要なときに、必要なものを、必要な量だけ、必要最低限なコストでフレキシブルに」という「自由さ」も大きかったと石川氏は語る。また「“所有から利用へ” という変化に対する不安は、いきなりパブリックネットワークに置き換えるのではなく、第一段階では自社内に置けるという点から、まったくなかった」と言う。パイオニアの基幹システムにIBMのAS400を導入済みというNI+Cとの付き合いがあったことも選定の背景のひとつだが、今回の提案を通じて「ユーザーである我々の意見を良く聞いてくれる企業」という印象が強くあり、SEに対しての信頼も厚く、安心して任せられるという心理が大きな理由ともなった。
仮想ホスティング・サービスにより、国内生産管理システム 海外向けデータHUBシステム カスタマーサービスシステムをクラウド化
NI+Cエンタープライズ・クラウドコンピューティング・サービスのうち、資産を持たずにサービスとして利用でき、利用者のニーズに合わせてカスタマイズして運用できる「仮想ホスティング・サービス」をベースに、日本国内4事業所6システムに対するクラウドコンピューティング・サービス環境への移行を行った。旧AS400として定評のシステムであるIBM Powerアーキテクチャで構成されたシステムをクラウド化。System i 上のアプリケーションも稼働できるIBM Power Systems をインフラに採用したクラウドだ。ただ、まだ移行段階の途中で、これから海外のシステムと統合し、さらなる効率化とコスト削減を目指していく。
- 従来
国、拠点別にシステムの計画~導入、運用をしており、各々運用要員の確保及びシステムの老朽化・増強への対応などの課題を持っている状況。
- STEP 1
国内主要System i 環境をクラウド化。統合による人・システムの効率化だけでなく、クラウドコンピューティング・サービスによりITインフラに関する計画~運用業務から解放され、全体的なQCD 向上に貢献。
- STEP 2
国内関連会社、海外拠点のSystem i 環境をクラウド環境に移行・統合。柔軟なシステムリソースを活用することで、全社レベルでの最適化を実現。
システム環境統合による業務の効率化、設備の集中化による生産性向上。約40%のコスト削減
- 初年度からのIT費用の削減
- 複数システムの統合により、TCO削減効果
- 今後のシステム統合、拡張に対する迅速な対応が可能
「最大の課題であったコスト削減の効果は初期投資費用の削減だけではなく、日を追うに従ってさらに明確になっていった。導入時のトラブルもほとんどなく、なんでこんなに簡単なのかと不思議に思えるほどのスムーズな移行だった。当然、サービスの提供も安定して行えている。ただ箱物を提供するだけでなく、複数の担当SEを配備して、様々な質問に答えてくれたり、改善の提言もしてくれたりする。プロフェッショナルな人的資源の提供も含めた大きなパッケージとしてのサービスが大きなメリットであった。クラウドコンピューティング・サービスに移行して、大変満足をしている」と石川氏は語る。
さらには想定していなかった効果も現場では出始めている。今回のサービスにはバックアップの自動化ソフトウェアが全システム上に提供されているが、この機能は今までなかったものであった。これを利用することで運用方法を変えることが可能である。現場ではシステムを改善していくためのきっかけとなっているようだ。また、「老朽化に伴う更新はコストも手間も含めて常に頭を悩ませてきた問題であるが、その時期が来れば最新のものに自然に更新されていくこのサービスでは一切考えなくて済む。精神的に大いに開放感を味わっている」とも言う。
日本情報通信株式会社
ゼネラルビジネスプロジェクト部
基盤技術グループ
佐藤 壮介
日本情報通信株式会社
営業統括本部
法人第1営業部
菱木 達也
- 国内外のPowerシステム環境のクラウド化拡張により、全社レベルでの統合とコスト削減
- OPENシステム分野での活用を検討
「今回は、まずひとつのかたちを作っただけに過ぎない」と石川氏は語る。「もっとこの可能性を拡げていかねばならない。今回は取り込めなかった環境もある。点在していたものを集めて効率化を図ったが、まだ集めきれていないものもさらに集めていきたい。また、せっかく集めた環境をさらに効率化して行くには、我々の業務プロセス自体を効率的に変えていく必要もあるだろう。そういった事柄ができていくと、ごく自然にビジネスの対応力が高まっていくのではないか。“ 新しいビジネスをやりたい。だからこういうシステムが欲しい。それでは新しいハードを購入しますが、それには時間がかかります…… ” ではビジネスチャンスを逃してしまう。クラウドコンピューティング・サービスではそういう対応が迅速に提供される。さらなるコスト削減とビジネス対応力の増強をこのサービスで押し上げていきたい」と、石川氏は今後に向けて意欲的だ。
今後の展望
- 国内外のPowerシステム環境のクラウド化拡張により、全社レベルでの統合とコスト削減
- OPENシステム分野での活用を検討
「今回は、まずひとつのかたちを作っただけに過ぎない」と石川氏は語る。「もっとこの可能性を拡げていかねばならない。今回は取り込めなかった環境もある。点在していたものを集めて効率化を図ったが、まだ集めきれていないものもさらに集めていきたい。また、せっかく集めた環境をさらに効率化して行くには、我々の業務プロセス自体を効率的に変えていく必要もあるだろう。そういった事柄ができていくと、ごく自然にビジネスの対応力が高まっていくのではないか。“ 新しいビジネスをやりたい。だからこういうシステムが欲しい。それでは新しいハードを購入しますが、それには時間がかかります…… ” ではビジネスチャンスを逃してしまう。クラウドコンピューティング・サービスではそういう対応が迅速に提供される。さらなるコスト削減とビジネス対応力の増強をこのサービスで押し上げていきたい」と、石川氏は今後に向けて意欲的だ。