
日本情報通信株式会社
年間7万件の精算処理に追われた日本情報通信が、「Smart Go」で交通費精算そのものをなくすパラダイムシフトに挑戦。生産性とガバナンスを劇的に向上させた軌跡に迫る。
交通費精算に潜む「見えないコスト」と属人化からの脱却
年間7万行の明細処理に追われた経理部が、Smart Goで実現した「交通費精算ゼロ」への挑戦
長年にわたり慣習化されてきた交通費精算業務。多くの企業がその非効率性を認識しつつも、根本的な解決策を見出せずにいる。DXのプロフェッショナル集団である日本情報通信もまた、この普遍的な課題を抱えていた。同社が、単なる「効率化」ではなく、業務の「ゼロ化」というパラダイムシフトを選択し、全社的な生産性向上とガバナンス強化を実現するまでの軌跡を追う。
日本情報通信はこの問題をどのように解決したのか?
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第1章:導入前の課題 – 全社に蔓延する非効率性と潜在的リスク
システムインテグレーターとして、数々のお客様企業のDXを支援する日本情報通信(以下、NI+C)。しかし、その裏側で自社のバックオフィス業務、特に交通費精算においては、多くの日本企業が抱える普遍的な課題に直面していた。それは、単なる「手間」という言葉では片付けられない、経営レベルでの根深い問題であった。
年間7万行の明細が引き起こす、経理部門の業務逼迫と月次決算への影響
NI+Cでは、コロナ禍以前、交通費精算の年間明細数が約7万行に達していた。これは、従業員一人ひとりが移動のたびに交通費を立替え、後日経費精算システムに手入力で申請するという、ごく一般的なプロセスから生じる膨大なデータ量である。このプロセスは、経理財務部にとって大きな負担となっていた。NI+C グループ経営本部経理財務部 主査の島田尚哉氏は、当時の状況をこう証言する。
「経理側としては、申請してもらわないと費用として計上できないため、移動が多い社員からなかなか申請が上がってこないと、当月の費用計上が遅れるという問題がありました。特に決算期には数か月分まとめて申請してくるケースもあり、内容確認や修正依頼に追われ、繁忙期にさらに業務が集中するという悪循環に陥っていました」
この「駆け込み申請」は、単に経理部門の業務負荷を高めるだけでなく、経営の観点からも深刻な問題をはらんでいた。月ごとに発生した費用が平準化されず、特定の月に偏って計上されることで、月次決算の精度が低下する。これは、経営層がリアルタイムで正確な業績を把握し、迅速な意思決定を行う上での大きな阻害要因となっていたのだ。
従業員の生産性阻害と、年間650万円に上る「見えないコスト」の顕在化
これらの課題は、経理部門だけに留まるものではなかった。従業員からは「経費精算は行為自体が面倒だ」という声が絶えず、申請の遅延によって領収書を紛失し、自己負担となるケースも発生していた。これは従業員の満足度を低下させるだけでなく、本来のコア業務に集中すべき時間を奪う、全社的な生産性の阻害要因となっていた。
NI+Cは、これらの「見えないコスト」を定量的に把握するため、導入前に独自の試算を行った。まず、外出頻度の高い従業員約300名を対象とし、彼らが交通費精算に費やす時間を月々30分と仮定。これによる人件費損失は年間570万円に上ると算出された。さらに、従業員への立替経費の払い戻しにかかる振込手数料が年間80万円発生していたことも判明。これらを合算すると、交通費精算という一つの業務に対して、年間で実に650万円ものコストが発生していたことが明らかになった。この具体的な数値は、これまで漠然と感じていた問題の根深さを浮き彫りにし、経営層を含む全社的な課題認識を醸成する上で決定的な役割を果たした。
「悪意はなくとも経路を忘れて曖昧なまま申請されたり、あるいは悪意を持って水増し申請されたりする可能性を、システム的に排除することは困難でした。上長が承認してしまえば、そのまま精算できてしまう。それがどれだけあるのか把握できない、という状況はガバナンス上のリスクだと感じていました」
さらに、システムのコピー機能による意図しない二重申請といったオペレーションミスも散見された。これらのリスクに対応するため、経理担当者は属人的なスキルに頼らざるを得なかった。
「二重申請を発見するため、経費精算システムから実績データを都度Excelに出力し、ピボットテーブルやフィルター機能を駆使して手動でチェックする作業に、毎月2回の精算タイミングで合計2時間ほど費やしていました」と島田氏は語る。
この作業は、本来システムが担うべきチェック機能を人間が補っている状態であり、人的コストに見合わない非効率な業務の典型例であった。

グループ経営本部 経理財務部
島田 尚哉 氏