
日本ハム株式会社
「監視」と「インシデント管理」を抜本改革 日本ハムが“逆境こそ、わが道なり”の精神で挑んだ「IT運用の高度化」とは
「監視」と「インシデント管理」を抜本改革
日本ハムが“逆境こそ、わが道なり”の精神で挑んだ「IT運用の高度化」とは
突然のデータセンター閉鎖という事態に、日本ハムが全社を挙げて挑んだ「紡プロジェクト」。単なるシステム移転にとどまらず、運用管理の標準化と高度化の絶好の機会と捉え、攻めの運用管理への転換を果たした同社の取り組みを振り返る。
「逆境こそ、わが道なり」の精神を引き継ぎ、システム運用管理の刷新へ
日本ハムは、従来のデータセンターサービスが閉鎖するという緊急事態を必ずしもネガティブに受け止めたわけではない。同社創業者である大社義規氏の座右の銘であった「逆境こそ、わが道なり」。このチャレンジ精神が、今も同社の組織風土に深く根付いているからだ。
IT戦略部 部長の中村吉宏氏からも、「今回のミッションは単なるデータセンター移転ではなく、インフラ全体の変革を成し遂げるための絶好のチャンスだ」と、プロジェクトメンバーに檄(げき)が飛ばされた。
こうして発足した「紡プロジェクト」では、重要テーマの一つに「システム運用管理の進化」が掲げられた。日本ハムと日本ハムシステムソリューションズは、データセンター移転とシステム運用管理の抜本的な変革を一体的に進めることを決断。そのパートナーとしてNTTインテグレーションを選定し、運用分科会を組織して本格的な刷新の取り組みに着手した。
従前のシステム運用管理が抱えていた「監視」と「インシデント管理」の課題
変革の背景には、ニッポンハムグループのシステム運用が抱えていた切実な課題があった。日本ハムシステムソリューションズ ITサービス第3事業本部 ITインフラ・ビジネスプラットフォーム部 ネットワーク/DC移転グループ チームリーダーの大橋祐太氏は、「以前は、業務ごと、システムごとにばらばらの運用が行われていました」と振り返る。
最も懸念されていたのは、監視レベルの低さだった。
日本ハムシステムソリューションズ ITサービス第3事業本部 ITインフラ・ビジネスプラットフォーム部 ネットワーク/DC移転グループの林実咲氏は、「これまで各サーバの稼働状況について、行っていたのは『Ping』コマンドによる死活監視のみでした。システムが停止して初めて問題を検知することになるため、常に対策が後手に回ってしまいました」と語る。
もう一つの深刻な問題は、インシデント管理の分散化だ。

ITサービス第3事業本部 ITインフラ・ビジネスプラットフォーム部 ネットワーク/DC移転グループ チームリーダー
大橋祐太氏
「インシデントが発生した際に、これまでは各部門のシステム担当者が旧データセンターでオペレーションを委託していたITサービス会社と直接やりとりし、それぞれ個別の方法で対応していました。そもそもニッポンハムグループ全体で統一された運用方法が確立されておらず、インシデントを解決した後の管理状況の把握も困難で、ブラックボックス化した状況にありました」(大橋氏)

ITサービス第3事業本部 ITインフラ・ビジネスプラットフォーム部 ネットワーク/DC移転グループ
林 実咲氏
前述の通り、日本ハムおよび日本ハムシステムソリューションズの両社は、今回のデータセンター移転を、これらの課題を解決する絶好の機会と位置付けたのである。
新たなSO(戦略的アウトソーシング)のパートナーに選定され、紡プロジェクトに参画することになったNTTインテグレーション クラウド事業本部 ITOpsイノベーション部 部長の志田原啓氏は、「まずはデューデリジェンス(適正評価手続き)のフェーズを設け、運用分科会として何をどんな順番でやっていくのか、いつまでに実施し、何をゴールとするのかを検討しました。最初の3カ月間で、メンバー全員で“システム運用管理のあるべき姿”を徹底的に議論した上で計画の骨子を策定し、プロジェクトをスタートしました」と語る。この「最初の3カ月」における徹底した現状分析と合意形成こそが、後の成功の鍵となった。
「APM」と「ServiceNow」によるシステム運用管理の高度化
プロジェクトの第一歩は、現行システムの運用管理状況の全量把握から始まった。
「まずは全てのシステムをテーブルに上げて、一つ一つの中身を明らかにすることから始めました。そして個別の運用管理は極力なくすという方針の下、運用管理の標準化とシンプル化を目指しました」(大橋氏)
そして各システムの監視体制を底上げすべく導入したのが、NTTインテグレーションがフルマネージドサービスでAPM(アプリケーション性能監視)/オブザーバビリティ(可観測性)ソリューションを提供する「APM as a Service」である。
これまでニッポンハムグループにおけるシステム監視は、Pingコマンドによる死活監視に限定されていた。対してAPM as a Serviceは、リアルタイムでメトリクスデータやログを分析し、インフラリソースだけではなく、アプリケーションのパフォーマンス、Webサーバやデータベースのパフォーマンス、ユーザーが実際に実感する快適性まで、フルスタックにわたる稼働状況を可視化する。
APM as a Serviceの導入により、各ITシステムがさまざまな業務に対して安定したサービスを提供できているかどうか、総合的に監視、把握することが可能となった。

クラウド事業本部 ITOpsイノベーション部 部長
志田原啓氏
一方、新たな運用管理の中核として導入したのが、ITサービスマネジメントのベストプラクティスに準拠した「ServiceNow」だ。ServiceNowによって、従来はシステムごとにばらばらに行われていたインシデント管理を一元化し、管理ポータルを通じてニッポンハムグループ全体の対応状況を可視化できるようになった。
NTTインテグレーション クラウド事業本部 マネージドサービス部 第二グループ 担当課長の鎌田悦生氏は、「APM as a Serviceから発せられるさまざまなイベントやアラートもServiceNowと連携しており、日本ハムシステムソリューションズや各システムの運用担当者に対する連絡、対応指示も同じ管理ポータルで確認できる仕組みになっています」と説明する。
なお、この管理ポータルは非常に使い勝手が良く、日本ハムシステムソリューションズも高く評価している。
「管理ポータルの導入に際しては、各システムの運用担当者に簡単な説明会を1~2回実施しただけなのですが、その仕組みをすぐに理解して使いこなしています。インシデントが発生した際も、運用担当者は自律的に対応しており、私たちもクローズするまでの進捗(しんちょく)状況を随時確認し、必要に応じて指示を出せます。各システムサービスレベルが標準化・可視化・統一化され、システム運用管理にまつわる業務が大きく効率化された効果を実感しています」(林氏)
「日本ハムさまが特に重要視していたシステム監視レベルの向上と、分散していたインシデント管理の一元化、この2つの目標を達成したことで、運用分科会としての使命をひとまず果たせたと考えています」と志田原氏は、ここまでの取り組みを総括する。

クラウド事業本部 マネージドサービス部 第二グループ 担当課長
鎌田悦生氏

グループ全体のビジネス成長に寄与する新たな価値を創出
ただし、運用分科会の活動はこれがゴールではない。志田原氏も「ひとまず」と述べた通り、システム運用管理の刷新に向けた取り組みはまだ道半ばにある。
将来を見据えた具体的な目標として、ニッポンハムグループではこれまでの事後対応型の運用管理体制から脱却した、よりプロアクティブな運用管理体制への転換を目指している。今回、APM as a ServiceとServiceNowの導入によって実現されたシステム運用状況の可視化は、そこに向かっていくための重要な基盤となる。
すでに多くの気付きも得られている。
「これまでは各システムがリソース不足に陥らないように注意を払っていましたが、各システムの負荷状況が可視化されたことで、実際には余力を持ったシステムが予想以上に多いことが明らかになりました。私としては知らず知らずのうちに過剰投資を続けていたことが非常にショックでもあり、今後に向けたリソース最適化によるコスト削減への道筋が見えてきました」(大橋氏)
また、システム監視対象の拡大も大きな課題である。
「ここまでの取り組みにより、オンプレミス環境で運用しているシステムは手厚い監視体制が整いました。一方、まだまだ遅れているのがクラウドに移行したシステムへの対応です。すでに多くのシステムがAWS(Amazon Web Services)などのクラウド上で稼働していますが、これらのシステムは別の仕組みで監視しているのが実態で、早期にオンプレミス環境との一元化を図りたいと考えています」(林氏)
もちろん、APM as a Serviceはプラットフォームを問わず、クラウドも監視対象とすることが可能だ。「特にAWSに関しては『Amazon CloudWatch』機能と連携したモニタリングが可能で、アプリケーションレイヤーまで含めたAPM as a Serviceの機能をフルに活用した統合監視の高度化を支援していきます」と、志田原氏は課題解決に向けたシナリオをすでに準備している。
こうした取り組みを重ねていく先に見据えているのが、「攻めの運用管理」だ。「システム運用管理の高度化と統合されたワークフローによって大幅な負荷軽減が図られ、弊社の人的リソースをシステム最適化に向けた企画提案など、よりクリエイティブな業務に振り向けることが可能になりました。単なるコスト削減だけにとどまらない、ニッポンハムグループ全体のビジネス成長に寄与する新たな価値を、システム運用管理の視点から創出していきます」と、大橋氏は意気込みを示している。

※この記事は、2026 年1 月に掲載されたアイティメディア編集局制作コンテンツを再構成したものです。
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2512/26/news04.html
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