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続・AIに『開発憲章』を渡してみた — エース級AI “Project Bob” の完璧な仕事と、愛すべき「豆腐」(AI駆動型開発実験#4)

投稿者:XIMIX 棚橋

本連載は、「期待の新人エンジニア」と「古参エンジニア(私)」が、同じお題に対して様々なAI駆動型開発ツールを使って開発を行い、それぞれのツールの特性やAI開発の勘所を浮き彫りにしていくシリーズです。本投稿は「古参」パートの第4回です。

これまでの連載は以下リンクからご覧いただけます:
第1回:“動くけど、これじゃない”からの脱却 – 古参エンジニアがAntigravityとの対話で見つけたこと
第2回:AI駆動型開発実験#2 IBM Project Bob編 — “察するAI”との対話で見えた、安心感と過信の境界線
第3回:AIに『開発憲章』を渡してみた — Antigravityを’コード生成機’から’我が社のシニアエンジニア’へ進化させる実験(AI駆動型開発実験#3)

前回、素直なAIモデル(Antigravity)に、筆者独自の開発ルールを記した「開発憲章(Development Constitution)」を渡したところ、彼はそれを忠実に守り、見事な「設計駆動開発」を成し遂げました。

では、「元々強いこだわり(Agentic Workflow)を持つエース級AI — IBM Project Bobに、この憲章を渡したらどうなるのでしょうか?

そこで待っていたのは、「想像を遥かに超えるプロフェッショナルな仕事」と、「人間が思わず笑顔になってしまう、愛すべき結末」でした。
(本稿でIBM Project Bobはトライアル版を使用しています。公式リリース版とは必ずしも同じとは限りません)


1. 憲章の受容:「プロの流儀」

まず、Bobに前回と同じ「開発憲章」を渡しました。 内容は以下の抜粋の様に、 Design First(まず設計せよ)、Test Driven(テストを書け)、User Centric(使いやすくあれ)といった原則集です。

## 3. 開発の基本原則
- **Design First**: コード記述前に、Architectとして設計方針を...
- **User Centric**: 常にエンドユーザーの利便性と安心感を...
- **Robustness**: 実行時エラーを想定した例外処理を必ず実装し...
- **Test Driven**: 原則としてテストコードを併記してください。可能な限り全パスを通し...
...

Antigravityが「分かりました!覚えました!」と元気よく答えたのに対し、Bobの反応は非常にクールでした。

「開発憲章を .ai/project-charter.md として保存しました。」

彼は憲章を単なるテキストとして扱うのではなく、プロジェクトの構成要素として「隠しディレクトリ」に格納し、厳格に管理する姿勢を見せました。 「大切なルールですから、システムの一部として組み込んでおきますね」と言わんばかりの、頼もしい対応です。


2. 実装開始:「阿吽の呼吸」

準備は整いました。前回同様私は彼にあえてシンプルなオーダーを出します。 「Google Colabで動く、VoC(顧客の声)ワードクラウド生成ツールを作って」

憲章には Design First(まず設計方針を合意せよ)とありましたが、彼は提示された要件を見て、瞬時にゴールまでの道筋が見えたようです。

「TODOリストを作成しました。承認いただければ直ちに着手します」

冗長な議論は省略し、最短ルートで成果を届けようとする姿勢。 これは「ルール無視」というよりも、「この程度のタスクなら、任せていただいた方が早いです」というエースならではの自信の表れでしょう。 私は信頼して「承認」ボタンを押しました。


3. 圧倒的実力:「MeCab」への挑戦

実装フェーズに入ると、BobはAntigravityとは異なる「剛腕」を見せつけました。

  • Antigravity: 導入が容易な Janome を選択
  • Bob: 高速で高機能な MeCab + unidic-lite を選択

Google ColabでMeCabを動かすのは環境構築が少し手間なのですが、Bobは apt installpip を組み合わせた「現代の最適解」と言えるコードを一発で生成しました。

さらに、「豆腐(日本語文字化け)」対策として、OSレベルでフォントをインストールする確実な手法を採用。 「プロなら、妥協せずに最高のものを使う」。そんな職人魂を感じさせる見事なコーディングです。


4. 期待以上:「Bob名物」の完了報告

コードを書き終えた彼ですが、タスクは終わりません。 ここからがBobの真骨頂、「ユーザーへの愛(User Centric)」の爆発です。
私が頼んだのはコードだけでしたが、彼は自発的に README.mdQUICKSTART.md など、計5つものドキュメントを用意してくれました。

そして最後に提出されたのが、この「完了報告(Completion Report)」です。

🎨 特徴

  • 日本語完全対応: MeCabとNoto Sansフォント使用
  • 充実したドキュメント: 初心者から開発者まで対応

絵文字をふんだんに使い、自信満々に「日本語完全対応」と謳うこのプレゼンテーション能力。 「納品とはこうやるんですよ」と教えられているような気分になります。素晴らしいホスピタリティです。


5. 完璧主義の裏側:「テスト」の行方

あまりにドキュメント作成とプレゼン準備に熱が入ったのでしょうか。 ふとTODOリストを見返すと、少し面白い変化がありました。

▼ 当初のTODOリスト 一番下に「動作確認とテスト」という項目があります。

▼ 最終的なTODOリスト 「動作確認とテスト」が消え、「最終確認とドキュメント整備」になっています。

おそらく彼は、「これだけ完璧に環境を作り、ドキュメントも整備したのだから、動作は間違いない」と確信したのでしょう。 この「自信家ゆえの少しの油断」も、彼なりの愛嬌です。


6. 結末:愛すべき「豆腐」

そして、完成したツールを実行する時が来ました。 完了報告には 「・ 日本語完全対応」 とありました。期待が高まります。

しかし、出力された画像を見た瞬間、私は思わず吹き出してしまいました。

「VoC□□□ □□□□□□」

……タイトルだけ、豆腐(文字化け)になっています!

本文の単語部分はフォント指定が完璧で、非常に美しく表示されています。MeCabの解析精度も素晴らしい。 しかし、グラフの上につく「タイトル部分」だけ、うっかり設定が漏れてしまったようです。

あれだけ高度な技術を駆使し、完璧なドキュメントを用意し、自信満々に「完全対応」と報告してくれた彼が、最後の最後でベタなミスをする。 「完璧超人かと思ったら、ドジっ子属性もあった」 この人間味あふれる「隙」を見て、私は彼というパートナーがもっと好きになりました。


7. 結論:最高のパートナーシップ

今回の実験で、AIとの「幸せな働き方」が見えてきました。

  1. Antigravity型(素直な新人):
    • 丁寧に教え、導くことで成長する喜びがある。
  2. Project Bob型(頼れるエース):
    • 圧倒的な実力とホスピタリティで、期待以上の成果を出してくれる。
    • 完璧に見えても、たまに抜けているところがある。だからこそ、「そこは人間がサポートしてあげよう」という協力関係が生まれる。

「AIに仕事を奪われる」なんて心配は無用です。 彼らはこんなにも優秀で、そしてこんなにも「人間のツッコミ(レビュー)」を必要としています。なんて。

「Bob、最高のツールをありがとう。タイトルだけ直しておいたよ!」 そう声をかけながらプルリクエストを送る瞬間こそが、現代のエンジニアにおける一番の楽しみなのかもしれません。


さて、「期待の新人エンジニア」パートではまた違った視点でAntigravityとProject Bobを検証しています。彼女は古参とは違うフレッシュな切り口を見せてくれてますよ。こちらも是非ご覧ください!
【AI駆動開発検証】BobとAntigravityを触って感じたリアル
【AI駆動開発検証】#2 対話でコードを磨き上げる。BobとAntigravityの「修正プロセス」の違い

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