Lookerで“売れ残り”と“欠品”を可視化!小売業の在庫最適化ダッシュボード構築ガイド
投稿者:杉山
目次
- はじめに
- なぜ「月次集計」では在庫最適化が難しいのか
- Lookerで実現する「攻め」の在庫管理(ダッシュボード構築例)
- Looker導入の肝は「LookML」による定義統一
- さいごに
1.はじめに
こんにちは、杉山です。
小売業界のお客様とデータ分析のお話をする際、必ずと言っていいほど話題に上がるのが「在庫と売上のバランス」という永遠の課題です。在庫を持ちすぎればキャッシュフローが悪化し、絞りすぎれば欠品による機会損失(チャンスロス)が発生する。このバランスを最適化するために、多くの企業様が日々データと向き合っていらっしゃることと思います。
しかし、「先月のデータがまとまった頃には、すでに季節が変わっている」「全店舗の状況を把握するために、毎週Excelでの集計作業に追われている」といったお悩みもよく耳にします。
本記事では、次世代BIプラットフォーム「Looker」を活用し、勘や経験だけに頼らず、データに基づいて「売れ残り」と「欠品」を同時に削減するためのダッシュボード構築・活用のポイントを紹介します。
2.なぜ「月次集計」では在庫最適化が難しいのか
従来の運用でボトルネックになりがちなのが、データの「鮮度」と「分断」です。
多くの現場では、以下のような状況が発生しています。
- POSデータ(売上)とWMS/基幹システム(在庫)が分断されている:別々のシステムからCSVを出力し、ExcelでVLOOKUP等を駆使して突き合わせている。
- 集計が「月次」や「週次」:レポートが完成する頃には、欠品や死に筋化が進んでいる。
これでは、数万SKU × 数百店舗規模のデータをリアルタイムに処理し、アクションにつなげることは困難です。
Lookerを導入する最大のメリットは、これらのデータをDWH(BigQueryなど)上で統合し、LookMLという定義ファイルを用いることで、集計処理を自動化・高速化できる点にあります。
3.Lookerで実現する「攻め」の在庫管理(ダッシュボード構築例)
では、実際にLookerを使ってどのようなダッシュボードが構築できるのか、具体的なユースケースを見ていきましょう。
在庫回転率と消化率の日次モニタリング
これまでは月単位でしか見えなかった「在庫回転率」を、日次推移で可視化します。

- グラフ形式: 表形式(ヒートマップ)
- 縦軸: 店舗名
- 横軸: 商品カテゴリ
- 指標: 総売上、在庫回転率
- 視覚効果: 回転率が高いセルを緑色、低い(在庫過多の懸念がある)セルを赤色で表示。
これにより、シーズン序盤で「このカテゴリはA店で動きが悪い」といった予兆を早期に検知し、売れているB店へ店舗間移動(在庫偏在の解消)を行うといった判断が可能になります。
アラート機能による「欠品予備軍」の検知
売れ筋商品の在庫切れを防ぐため、Lookerのアラート機能を活用します。過去の販売トレンドと現在の在庫レベルを掛け合わせ、「あと3日で在庫切れ予測」といった条件で自動通知を設定します。


- グラフ形式: 表形式
- 項目: 商品名、在庫数、在庫枯渇予測日
- 視覚効果: 在庫枯渇まで3日以内の行を赤色で表示。
各店舗の店長が朝一番にこの画面を確認することで、発注ミスを未然に防ぐ運用が可能になります。
キャンペーン効果のリアルタイム検証
「あの値下げ施策は本当に利益に貢献したのか?」を検証します。値下げによる数量増が、粗利率の低下をカバーできているかを可視化します。

- グラフ形式: 面グラフ
- 縦軸: 売上金額
- 横軸: 受注日
- 視覚効果: キャンペーン期間(例:11月下旬)の背景に黄色い帯(プロットバンド)を表示し、施策期間を一目で分かるようにする。
効果の薄いキャンペーンは即座に中止し、好調な施策に予算を集中させるといった意思決定をサポートします。
4.Looker導入の肝は「LookML」による定義統一
ダッシュボードが綺麗なだけでは、現場の信頼は勝ち取れません。「在庫回転率」や「粗利」の計算式が人によってバラバラだと、数字の整合性が取れなくなるからです。

Lookerでは、LookMLという独自のモデリング言語を使用して、指標の定義を一元管理します。

5.さいごに
本記事では、小売業界における在庫・売上最適化のヒントとして、Looker活用術をご紹介しました。
「データ分析」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、目指すゴールはシンプルです。「必要な情報を、必要なタイミングで、現場に届けること」。 Lookerはそのための強力な武器になりますが、使いこなすためには、今回触れたようなデータ定義(LookML)の設計や、現場の業務フローに即したダッシュボード構築が欠かせません。
弊社では、Looker導入の技術支援はもちろん、小売業界の知見を活かしたKPI設計やデータモデリング、そして現場への定着化までを一貫してサポートいたします。
「自社のデータだとどうなるのか見てみたい」「まずはスモールスタートで検証したい」といったご相談も大歓迎です。 ぜひ、下記問い合わせフォームよりお問い合わせください。
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