EDIとは?~仕組みや導入のメリットをわかりやすく解説~
投稿者:藤基
企業にとって、受発注に関する業務は収益に直結するため、ヒューマンエラーやミスは事前に防がなければなりません。
しかし、精度を向上させることに集中するあまり、業務スピードが下がってしまうことによって多くの人件費が発生します。
高精度かつ高速で受発注業務を行うための方法として、「EDI」があります。
本記事では、EDIの仕組みや導入メリットについて解説します。
EDIとは
EDIとは、Electronic Data Interchange(電子データ交換)の略称で、伝票や文書を電子データで自動的に交換することを指します。
企業間では受発注だけではなく、契約書など取引に関するさまざまな文書をやり取りしています。
従来であれば紙媒体でやり取りを行っていましたが、確認や読み書きなどに多くの時間がかかってしまうことが課題でした。
また、手作業で書類や数量を記載することから、入力ミスなどの問題が発生してしまうことが多いものです。
さまざまな文書をデータで管理するEDIを使用することで、手間や経費を削減することができます。
たとえば、日本中の総合スーパーや食品スーパー・コンビニで、消費者が日々大量の食糧品・日用雑貨品を購入しても、店の棚に商品が並んでいないことはほとんどありません。
日本で自動車は、購入者の希望に合わせた仕様で毎日約3万台が製造されています。
これらはすべて電子的な取引によって成り立っているわけです。
そのため、近年の産業では、EDIがなくては取引ができないようになってきました。
EDIの定義
これまでEDIは、平成元年通商産業省「電子計算機相互運用環境整備委員会」において、「異なる組織間で、取引のためのメッセージを、通信回線を介して標準的な規約(可能な限り広く合意された各種規約)を用いて、コンピュータ(端末を含む)間で交換すること 」と定義されてきました。
国税庁によると、EDIとは下記のように定義されています。
「取引情報(取引に関して受領し、又は交付される注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」
また、従来からの固定電話を利用したEDIは、次のようなネットワークを活用した流れに移りつつあります。
- インターネット
- 電子メール
- Webサイトを通じた取引
EDIの実用性は国も認めていることから、中小企業庁では「中小企業共通EDI」と呼ばれるものを公開しています。
背景には、多くの中小企業の受発注業務がいまだに電話やFAXが主流であり、電子化が進んでいないことが挙げられます。
EDIを導入していても、企業ごとに異なるシステムに対応していることから、有効活用できていないという現実もあります。
参考ページ:国税庁ホームページ「法第2条((定義))関係」
(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/050228/02.htm)
参考ページ:中小企業庁ホームページ「中小企業共通EDI」
(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/edi.htm)
EDIの仕組み
EDIは発注者が用意したデータを受注者に送り、発注者と受注者との間で相互にデータをやり取りするところから受発注業務が始まります。
データの送受信を行う際には下記のような取り決めが必要となり、それぞれのEDIシステムで互いに理解できる形式に変換されます。
- 通信プロトコル
EDIを行う送受信者双方で決めた通信方式。現在は、全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順、広域IP網)やJX手順、ebXML MSなどインターネット経由の通信が主流となっています。 - 文字コード
EDIで使用する文字コードのなかには、シフトJISやUnicodeといったものが含まれています。
しかし、取り扱える文字コードは企業によって異なるため、受け取ったデータを自社で取り込めるように変換します。
- フォーマット
データのやり取りを行う際には、どこに何が記載されているといったフォーマットが決められています。
XML形式やCSV形式といったデータの形式を、自社で読み取れるように変換します。 - データコード
データコードとは、商品の情報が記載されているコードを指すもので、受発注だけではなく在庫管理などの際にも用いられています。
しかし、同一商品でもデータコードが異なることがあるため、その際は自社コードに置き換えなければなりません。
EDIを導入することで、対象となる商品の必要な数量を入力し、データを送付することで受注先の企業に発注を行います。
受注先の企業は受注データを自社に最適な形式へ変換し、受注した商品のピッキング・出荷作業を行うのです。
一方、電話やFAXなど、EDIを導入する前の受発注業務は下記のようになります。
- 発注企業がパソコンや手書きなどで発注書を作成する
- 作成した発注書を受注先にFAX、もしくは電話で発注する
- 受注した企業は自社のシステムに受注内容を入力し、ピッキングや梱包、発送作業を行う
- 受注企業が商品や出荷伝票、納品書などを準備する
- 発注企業は商品が届いたあとに、数量を確認して問題なければ検収書を作成する
- 作成した検収書を、受注企業に送付する
このように、EDIを導入しなかった場合多くの業務が発生するため、業務効率を下げる要因となります。
EDIを導入することで発注する商品の選定や検品、検収書の作成・送付といった作業を自動化することができます。
EDI標準の大切さ
ところが、このデータが取引先ごとに異なるとどうなるでしょう。
相手先ごと・データ種類ごとに送受信内容を取り決め、相手先ごとに異なる変換を行う必要が出てきます。
これでは、相手先と取り決めを行う手間、変換プログラムを開発する労力、異なる運用を維持するリスクなど、非常に多くの問題が発生します。
そこで重要とされるのが標準です。
同じような取引や業務内容の企業が集まり、みんなが納得のいくようなルールを定めます。
これは、一般に業界ごとに作成され、そのグループや組織の中で利用されます。
代表的なものに、流通業界で採用されている流通BMS、電子機器業界でのECALGA(JEITA-EDI)標準、石油化学業界のCEDI標準(JPCA-BP、Chem eStandards)などがあります。
EDIを実施する方法
EDIを実施するには、大きく分けて2つの方法があります。
データ交換型EDI
その中心となる方法が、このデータ交換型です。
実施するためには、専用のEDIシステムが必要で、そのシステムには、通信機能、データ変換機能、データ管理機能、業務スケジュール機能、セキュリティ管理機能などが含まれます。
このシステムは、自社と取引先のコンピュータをネットワーク経由で接続し、受発注、出荷・納品、請求・支払など、データ送受信から関連業務実行まで、人手を介することなく自動連係処理を行います。
現在のEDIでは、大手企業から中堅企業まで、このデータ交換型EDIにより大量処理の自動化をすることができています。
ただ、EDIシステムの導入や運用のコストを考えると、中小企業にとっては少し敷居が高く感じられるかもしれません。
Web型EDI(通称Web-EDI)
Web-EDIとは、一方の企業がインターネット上にアプリケーションを用意し、取引先はブラウザでアクセスして取引を行う、比較的容易に導入することができるEDIです。
Web-EDIを導入する際、EDIシステムをインストールする必要がないため、スピード感を持って導入できます。
また、インターネット環境とパソコンがあれば運用できることから、低コストでの導入を実現しています。
近年ではインターネット技術の発展により、多くの企業がWeb-EDIを導入する傾向にあります。
注意点として、Web-EDIは手作業が発生することを考慮しなくてはなりません。
導入コストが抑えられる一方で、取引内容によっては逆に運用コストが増加する恐れがあるため、導入する際にはよく検討する必要があります。
EDI導入のメリット
こちらでは、EDIを導入することによって得られるメリットをご紹介します。
業務効率の改善
先述の通り、EDIを導入することでこれまで手作業で行っていた業務を、ほぼ自動で行うことができるようになります。
また、手作業では入力ミスや作業漏れといったヒューマンエラーも発生します。
EDIではそれらを防ぐことができ、修正ややり直しの回数が少なくなるなど、人件費の削減に貢献します。
コスト削減
EDIはFAXや電話、紙媒体を使用しないことから、通話・印刷・発送作業・郵送・管理・保管にかかるコストも不要となります。
リードタイム短縮
リードタイムとは、発注から納品までにかかる時間であり、短いほど良いとされています。
手作業で行っている場合、人間には処理速度に限界がありますが、EDIは瞬時に大量処理ができ、郵送にかかわる時間がなくなることから、リードタイムの大幅短縮を実現することができます。
データの利活用
手作業や紙媒体による情報は、コンピュータによる再利用はできませんが、いったんデータ化することにより、自在に加工再利用ができるようになります。
その結果、あらたな情報に生まれ変わり、計画・在庫管理・調査・研究・分析など、様々な分野で利用することが可能になります。
EDI導入の流れ
EDIを導入する際は、下記の流れで進行します。
1. 業務の分析
これからEDIを実施しようとしている業務が、取引先の業務と整合性が取れているかを確認します。
相互に交換しようとしているデータや業務の運用ルールなどの調整が必要です。場合によっては、双方の業務の改修が必要な場合もあります。
2. データの送受信環境を整備する
取引先と確実にデータを送受信するために、双方の送受信環境を整備する必要があります。
EDIで使われる通信プロトコルを、最適なものから選択しなければデータの送受信ができません。
- 全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順、広域IP網)
- JX手順
- ebXML MS手順
- SFTP
3. データの形式を決める
一般的には「固定長形式」「CSV形式」「XML形式」といった形式で、データが送られてきます。
EDIシステムでこれらのフォーマットや文字コードを変換する機能を用意しておきましょう。
4. 基幹システムとの連携
EDI導入前でも、業務効率改善やミスを減らすために、受発注業務以外にさまざまなシステムを導入しているでしょう。
それら多くのシステムとEDIを連携できれば、一層の業務効率の改善が期待できます。
5. テスト
自社に合ったEDI環境を構築したあとは、本格稼働前にテストを実施します。
データの整合性は取れているか、業務は正しく連携できているかなど、自社だけではなく取引先と一緒に確認しましょう。
6. 本格稼働
テスト結果に問題がなかった場合、取引先との調整・合意の上で本格的に稼働します。
この場合、いきなりすべての業務を切り替えるのではなく、旧業務と新業務の並行稼働が必要となります。
これは、従来の業務と全く同じ結果を得られるか、またトラブルが発生した折にもすぐに旧環境に戻すことができるかどうかなど、非常に重要なステップになります。
それらすべてをクリアしたうえで、初めて新しいEDI環境の下での本格稼働となります。
EDIの導入形式
EDIの形式には、「オンプレミス型」と「サービス利用型」の2種類があります。
オンプレミス型
オンプレミス型とは、自社でサーバーの構築・運用を行うEDIであり、カスタマイズ性の高さが特徴です。
一方、システムが自社内で完結するため、システムの構築や運用のノウハウが必要になります。
また、自社の責任ですべての開発・運用・メンテナンスを行うため、相応の費用が発生し、技術者の養成や、停電、災害、障害などのリスク対策も必要となります。
サービス利用型
サービス利用型とは、EDI機能を提供するベンダーのサービスを利用するEDIです。
一般にはVAN(Varue Added Network)とも言い、EDIにかかわるさまざまなサービスを用意しています。利用者は、そのサービスメニューから自社が求めるEDIにふさわしい機能を選び利用することとなります。ここでのEDIは、通信プロトコルやデータの変換、データ蓄積、さまざまな相手先からのデータを収集・配信、自社で持たないアプリケーションの利用、などがあげられます。
カスタマイズ性についてはオンプレミス型の方が高く柔軟性もありますが、専門的ノウハウを期待するならサービス利用型がおすすめです。
EDI導入前に必要な準備
EDIを導入する際は、下記を実施しておきましょう。
取引先との協議
EDIを使用してビジネスデータをやり取りするためには、お互いが送受信できるデータ形式である必要があります。
そのためには取引先との協議は不可欠であり、どのような形式でどのようなプロトコルを使用しているのかなどを確認しましょう。
すでにEDIを導入している企業にとって、新たにEDIを追加導入する件の打ち合わせは時間を取られる業務になります。
事前に必要な調整項目を整理したうえで協議に臨むことが重要です。業界標準を利用する場合には、業界ごとに調整内容をまとめた設定シートなどが用意されているので、有効に活用しましょう。
通信プロトコル・フォーマットなどの確認
詳細は後述しますが、EDIには個別EDIや標準EDIなどのさまざまな種類があり、データ形式も多岐にわたります。
通信プロトコルは、取引先と同じプロトコルを準備する必要があります。
事前準備として、取引先との協議の際にどのような通信プロトコルやフォーマットを使っているのかを確認しておきましょう。
最小限のやり取りでEDIを導入することが、顧客満足度の維持や向上につながります。
EDI導入時の注意点
EDIを導入することでさまざまなメリットを得ることができますが、導入時にはいくつか注意点があります。
専用のシステムが必要
EDIを行うには専用のシステムを導入しなければなりません。
通信プロトコルやデータの蓄積・変換が必要となるからです。
すでにEDIを導入している企業とは、業務に応じて文字コードやフォーマット、データコードを合わせる必要があります。
そのため、EDIを導入する際は、専門の事業者やエンジニアに依頼して取引先に合ったシステムを導入・構築する必要があります。
近年ではWeb-EDIを導入する企業が増加傾向にありますが、そのメリット・デメリットを十分に検討したうえでの実施をご検討下さい。
企業間の関係に依存する
ビジネスでは受注者・発注者ともに対等な立場で行われなけなければなりません。
しかし、企業規模や取引金額によっては、どちらかが優位に立ってしまうことがあります。
EDIを導入する際も同様で、相手の立場が強い場合はそちらに合わせなければならないシチュエーションが多くあるものです。
立場が強くとも、一方的な交渉をすると下請法に抵触する場合もあるので、注意が必要です。
効率を下げる場合がある
中小企業では、手書きやメールなどで発注をするほうが、かえって効率が高いこともあります。
また、取引量が少ない場合など、EDIを導入してもの効果を実感しにくいことがあります。
これも中小企業でEDIの導入が進まない理由のひとつです。
EDIの種類
EDIには下記のようにさまざまな種類が含まれており、それぞれに特徴があります。
個別EDI
個別EDIとは、通信方法や識別コード、フォーマットなど、取引先によってルールを独自に取り決めて構築できるEDIです。
しかし、ルールは立場の強い側が主導で行うことが多いことから、独自仕様の制約を受ける場合もあります。
標準EDI
標準EDIとは、取引規約やフォーマットといった、基本的なルールが標準化されているEDIです。
同じ標準のEDIを使用している場合、複数の取引先間でやり取りを行うことができます。
業界VAN
業界VANとは、同じような取引形態の企業が集まり、業務や運用ルールを標準化した業界に特化したEDIで、特定のVAN事業者が主導して業界を取りまとめたビジネスを展開しています。
通信プロトコルや商品コード・取引先コード・運用ルールなどが標準化されているため、同じ業界であればスムーズなEDIや取引が可能となります。
しかし、他業界や異業種の場合は商品コードや取引先コード、取引ルールなどが異なるため、データの変換やシステムの改修が必要となります。
レガシーEDI
レガシーEDIとは、固定電話回線を使用したEDIで、現在では古いやり取りの方法となっています。
サービスを終了する企業が増えたため、レガシーEDIを使用している企業はインターネットEDIへの切り替えが必要です。
EDIと「EOS」の違い
EDIと混同してしまうことが多い言葉として「EOS」があります。
EOS(Electronic Ordering System)とは、ネットワークを利用して発注者が受注者に向けて発注情報を送る電子発注システムです。
あくまで電子発注であるため、EDIのように出荷・納品、請求・支払は対象となりません。
サービスの活用
EDIの導入形式で「サービス利用型」の説明をしましたが、最近このサービスに注目が集まっています。
というのも、従来のVANはEDIにかかわる通信やデータの蓄積・変換・集約・配信を中心に事業展開してきましたが、近年事業の内容がサービス中心に移りつつあります。
それは、利用者の業務に直接かかわる機能や技術の補完、手間やリスクの軽減など、企業が独自に対応しにくい、もしくは対応できなかったことを、専門知識を持った事業者がサービスとして提供してくれるようになってきたのです。
特に、これまでEDIではできなかったWeb APIによる柔軟なデータ連携など、利用者にとっては魅力的なサービスが生まれてきました。
このようなEDIを含む新しいデータインテグレーションの世界を、もっと活用するのも企業のDX展開には必須の要素となってきています。
NI+Cが提供するデータインテグレーションサービス「IRIS Connect」はこちらから
おわりに
本記事では、EDIの仕組みや導入メリットについて解説しました。
EDIとは伝票や文書を電子データで自動的に交換することを指すもので、下記のようなメリットを得ることができます。
- 業務効率の改善
- コスト削減
- リードタイム短縮
- データの利活用
一方、専用のシステムが必要である、企業間の関係に依存する、効率を下げる場合があるといった点には注意が必要です。
EDIには個別EDIや標準EDIといったものがありますが、レガシーEDIは徐々にサービスが終了しているため、導入している企業はインターネットEDIへの切り替えが求められています。
受発注作業に多くのリソースを割いている企業は、EDIの導入を検討しましょう。