【教えてヒロさん!】AIでサプライチェーンの流量をコントロール!データ統合が描く未来のエコシステム経済
投稿者:藤野裕司

みなさん、こんにちは! NTTインテグレーション(NI+C)エグゼクティブコンサルタントのヒロです。
今日もみなさんのビジネスを取り巻くサプライチェーンの「少し未来」をいっしょに考えてみましょう。
現代の複雑なサプライチェーンにおいて、AI(人工知能)を活用した流量コントロールは、ビジネスの効率化・最適化の鍵となりそうです 。SCM(サプライチェーンマネジメント)のバイブルであるエリヤフ・ゴールドラット博士著「ザ・ゴール」で記された「TOC(制約理論:Theory of Constraints)」が、まさにいまのAIとともにSCMの救世主となるでしょう。
TOCとは、組織全体のパフォーマンスを制限している「ボトルネック(制約)」を特定し、そこを徹底的に改善することで成果を最大化する全体最適のマネジメント手法 のことです。
が、ここでその説明は省きましょう。
(※詳しくは、書籍「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」をご参照ください)
これまでの現状分析で限界があった領域も、過去の受発注実績データと、実際の商品・資材の入出荷確定データを可能な限り集め、AIに投入することで、従来の予測モデルを遥かに凌駕する精度の高い予測分析が可能になります 。
今回は、この「AIによる流量予測・コントロール」が、各業界でどのような課題を解決し、どんな未来をもたらすのかを一緒に見ていきましょう!
業界ごとに見る、データ統合とAI予測のインパクト
サプライチェーンの形は業界によって全く異なります。しかし、「データを統合してAIで分析する」というアプローチは、それぞれの現場に劇的なメリットをもたらします。
- 自動車業界:階層の壁を越えた流量の可視化
- 自動車業界のように階層が深く複雑なサプライチェーンを持つ分野では、全OEM(完成車メーカー)とTier1・Tier2…(一次二次サプライヤー…)の全データを集約しAIで分析にかけることで、サプライチェーン全体の流量の可視化が実現します 。
- これまでも大手企業間ではデータ統合・分析は可能でしたが、なかなか末端のデータまで統合するのは難しかったのです。これを可能にするのが、Web APIによる「データの集約・公開・提供」となります。
- これにより、個々の会員企業の受発注や見込みの分析が可能となり、需要予測・生産計画の最適化、過剰在庫・欠品リスクの最小化に貢献します 。

図1 自動車業界
- 電子機器業界:半導体の素材調達から製造にいたるまでのサプライチェーンとエンジニアリングチェーンの安定化
- 電子機器業界におけるサプライチェーン(SC)とエンジニアリングチェーン(EC)の最大の課題は、両者の「分断」です。
- SCは、地政学リスクや災害による突発的な部品供給網の寸断、激しい需要変動への対応に追われています。一方ECは、製品のIoT化などによる複雑化に伴い、開発の短期間化と品質確保の両立、部門間のデータサイロ化、高度IT人材の不足に直面しています。
- これらを解決するには、設計主体のEC(E-BOM)と調達・製造主体のSC(M-BOM)の連携が不可欠です。
- AIにより設計と調達のデータを連携させ、部門間の壁を解消します。供給リスクを先回りして予測し、代替部品の自動提案や設計変更のリアルタイム同期を行うことで、トラブルに強い柔軟なものづくりが実現できます。

図2 電子機器業界
- 流通業界:リアルタイムな入出荷確定と外部要因の複合分析
- 流通業界、特に小売・コンビニエンスストアや卸において、日々発生するPOSや出荷確定データを集めることで、サプライチェーンの流量をリアルタイムで把握し、コントロールすることが可能となります 。
- 流通は、単なる過去実績だけでなく、地域特性、気候特性、イベントの有無、社会流行特性といった外部要因をベースとした需要予測と生産計画が極めて重要であり、これらの要素をAIが複合的に分析することで、より精度の高い流通計画を立案できます 。

図3 流通業界
- アグリ分野(農業):不確実性を乗り越える全生産量・消費量の予測
- アグリ分野においてもAI活用は大きな可能性を秘めています 。
- 生産物の出荷データに加え、肥料や殺虫剤等の入出荷データ、施肥や殺虫剤散布データ、さらには気象データや土壌データ、音室の温度管理や散水管理といった多岐にわたる情報をAIで統合的にコントロールできれば、全生産量・消費量の分析と予測が可能になります 。
- これにより、農産物の需給バランスの安定化や、生産計画の最適化、収穫量最大化にAIは大いに寄与します 。

図4 アグリ分野
短期的な足場固めから、中長期のエコシステム経済へ
さて、これらの予測と制御は、従来限られた企業の業務改善で行われてきた実績はあります。しかし、私たちが目指すのは、社会全体が繋がりかつ最大効率でデータを連携し合う「エコシステム経済」の構築です。
現時点での短期的な分析や予測については、すでに大手企業が実施してきた既存の資源とサービスを活かして、効率化を図るビジネスとして成り立ってきました 。一方、そのなかにはサプライチェーンの末端を含む中小・ロングテールの関係者のデータは加味されていませんでした。連携されるすべてのデータが正確でなければ、どのような情報が提供されようとも信用に値するとは言えません。
これからは、調査研究を含めた中長期的な「エコシステム経済」を展望する際に、より広範な視点と、データの統合・分析に基づく新たな価値創出が求められます 。そのためには、特に自動車業界、電子機器業界、流通業界、アグリ分野といった基幹産業における、前述のようなデータ統合とAIによる精緻な予測・制御の検討を本格的に進める必要があります 。
共に未来のサプライチェーンを創りましょう!
これらの領域での成功が、未来のエコシステム経済の基盤を築く鍵となります 。点と点のデータが線になり、やがて面となって社会全体を最適化していく。そんなSociety 5.0の実現に向けた壮大なビジョンが、もうすぐそこまで来ています。
データ分断の壁を乗り越え、AIの力でサプライチェーンの未来を切り拓く。国を挙げてのこの大きな取り組み、ぜひ皆さんとNI+Cとが一体となって、一緒に実現しようではありませんか!
それでは、次回の『教えてヒロさん!』でまたお会いしましょう!
(藤野裕司)